アコンカグア

…このゲームに、副題をつけるとしたら。

「都合がよすぎるアドベンチャー」。

なんとも不名誉な副題ですが(笑)、

そう言いたくなっちゃうほどとにかくすさまじい都合のよさ!

書いてるだけでも失笑してしまいます。

舞台は架空の国家、南米メルーザ。

政府と民主化運動の対立が激化しているこの国で事件は起こります。

民主化運動の代表者である「パチャママ」を乗せた飛行機が

何者かの陰謀により爆発してしまうところから話が始まるのですが…。

この飛行機、雪山(アコンカグア)へ墜落しますが、

とりあえずパチャママを含む主人公たちはほぼ無傷!

…この段階でもう相当無理があるんですけども……。

「雪のおかげで助かった」ってアンタ…。

ですが、こんなもんじゃありません。

最初のイベント、火災の鎮火。

道を塞いでいる木が炎上しているため、消さなければいけません。

雪山なんだから雪をかければいいじゃない!と思いますが、

そこはゲームですから。消せるものを探すことにします。

すると生存者発見!

なにやら意味深なカギをこちらに渡し、息を引き取ります。

たぶん、カギを渡さなければ死ぬ事は無かったでしょう(ゲーム的な意味で)。

そして…、まるで示し合わせたかのように墜落現場に落ちている、カギのかかった箱。

中にはなんと消火器!

すごい!奇跡!

ワタシはいまだかつて、カギで守られている消火器を見たことがありませんが、

そこはゲームですから。いただくことにします。

先に進むと…今度はツールボックスを無くしたエンジニアが!

横には、いかにもツールボックスを使ったら助けられそうな女性が!

そこでさっそくツールボックスを見つけたいのですが…。

どうやらそのツールはスーツケースに入っている模様。

それではがんばって探しましょう。

…このゲームは進めるごとに仲間が増えていき、

さらにそれぞれ固有のスキルがあるため、

行動する仲間を切り替えて、協力していかないとクリアはできません。

この段階では、

雪山に詳しく、高所に登れる邦人ジャーナリストの「カトウ」、

スペイン語を話せる民主化運動の要「パチャママ」、

アメリカ育ちの機械に強いエンジニア「スティーブ」の3人を動かすことができます。

ここは雪山知識豊富なカトウが散策。ほどなくしてスーツケースを発見。

しかし…。ここからのやりとりが秀逸。

持ってきてやれよ!!!!

スーツケースぐらいここに持ってきてやれよ!!!! お前体力あるんだからやれよ!!!!

…でも!

そこはゲームですから。当人に行かせて。

ツールボックスを使って、

客席のシートに足が挟まってしまった女性「ジュリア」を助けます。

するとこのジュリア、コンバットナイフとライターを所持。

そうだ!

これでロープを切って、岩に結び付ければ、下に降りられるぞ(カメラ目線)!

いつから飛行機は刃物と火気の持ち込みがOKになったのか知りませんが、

そこは、もちろん、ゲームですから。使っていきましょう。

…という具合にゲームは展開していきます。

あ、そうそう、もちろんゲームですから、

雪山を移動しても一切衰弱しません。

体力も減りません。寒がりもしません。みんな元気です。

…南米最高峰の実在する山ですが、ゲームなので大丈夫です。

さらにこの後、政府軍のヘリと戦う事になるのですが、

ヘリを倒すアイテムを取るには長い棒が必要…というシーンで、

見事に、政府軍のヘリからスキーのストックがポロッと落ちてきたりと、

もう都合のいい展開はとどまるところを知りません。

大体、民主化を平和的に進めたいパチャママが

政府軍のヘリ撃墜を手伝うのはどうなの…。

ということで逆にこれからどんだけ都合のいい展開が出てくるのか、

そういう意味で期待が持てます。先が見たくなります。

変な魅力満載!

…でね。

こんだけ話しといて今更言うのも難ですが、

はっきりいって、そもそもゲームというものは、

ある程度の都合のもとに成り立っています。

それは宿命ですし、それを非難するのはナンセンスだと思います。

けれどこのゲームの都合のよさについていろいろ書いてきたのは、

何より、このゲームが、まるで史実のような、

リアリティのある雪山脱出ゲームとして描こうとしているからに他なりません。

さらには、パチャママと政府との戦いがもうひとつの主軸として語られていき、

とにかくシリアス一辺倒の内容。

おちゃらけたシーンは一切入ってきません。

…だからこそ。だからこそ!

この都合のいい展開が余計に面白く見えてしまうという。

リアリティ目指してるワリにその穴だらけのゲームデザインは何なの!!?っていう。

じゃあもう魔法使えるようにしちゃえよ!っていう。

タイトルが「アコンカグア」という、実在の山の名前にしているところも

こうなってくると若干イラッとします。

…まあそんなカンジですので、

もしこのゲームをやる機会があるのであれば!

「このゲームはすべて役者が演じてるドラマだ」と、

よーく自分に言い聞かせてからプレイしてみてください。

過剰な期待は禁物です。

そして、広い心で、プレイしましょう(笑)。

まあ…その時間があるなら別のゲームをやる事をオススメしますけども。