「ザハンの町」~「聖なるほこら」。
漁師の町ザハン。
男たちは一年のほとんどを海の上で過ごす。
「どうりで肝っ玉かあちゃんが多いわけだ。」
「そうね、とってもしっかりしてる。
こうでないと漁師の奥さんなんてやっていけないわよね…。」
「泉ピン子クラス?」
「何が。」
「いや、肝っ玉度合いが。」
「どういう例えよそれ…。」
とまあ色々話しつつ町のなかを散策。
と。
「ちょ、ちょっとそこのお兄ちゃん!」
子供が話しかけてくる。
「おっ、なんだい?」
「あのね、あのね、そこのね、犬がね、犬がね、ぼくのね、そでをね、ひっぱるの。」
「実はケルベロスかもよ。」
「ケッ、ケルベロ…、うわああああああん!!!」
「ちょっとうそつき、子供泣かしてんじゃないわよ!」
「ああ、ごめんごめん。本当はヘルハウンドだよ。」
「うわああああああああああああん!!!!!」
「やめなようそつき!」
「いや、おもろいから。」
「…それはそうと、ねえうそつき、あの犬こっち見てるわよ。」
「…なんだろうな。」
こっちも見つめ返す。
するとまるで「ついてこい」と言わんばかりの風体で犬は歩きはじめる。
ついていくと犬は突然立ち止まり、アゴで地面を指した。
「この犬畜生!! てめえ人間様に指図するってのか!!」
「おちついてようそつき、なんかきっとあるんだよ。
どれ………………………、ああッ!!!」
「? どうしたのとらうま?何かあったの?」
「これ、金のカギだ…。」
「えーッ!!!!!」
犬は「おまえらにくれてやる」といった表情でうそつきの目を見た。
「ぐ…、このオレ様が畜生風情に……。」
「まあいいさ、ありがたくもらっておこう。」
「ありがとねえワンちゃん。おりこうおりこう。」
にせものに撫でてもらいつつ、
「人間風情が生きがってんじゃねえよ」という表情でうそつきを見る。
「うがあああああああああ!!!!!!
どけにせもの、こいつはハーゴンの手下だ!!! 2回は死なす!!!!」
「ちょっ、やめなさいよワケわかんないこと言って! もう行くわよ!」
「離せ、はーなーせーッ!!!」
……
「とまあ、金のカギを手に入れた事だし。」
「そうね、今まで行けなかった所に行ってみましょう。」
…
所変わって、デルコンダル城。
「お、おい、何をするんだ、これは私のものだ、やめろッ!!!」
「うるせえこの野郎、がたがたぬかしてねえでよこせェ!!!!」
「お…、鬼だ、あんたら鬼にも勝るド畜生だアアア!!!!!」
武器屋のうら手にまわり、「ガイアのよろい」ゲット。
「…あのさ、うそつき。」
「なんだよとらうま。」
「それって勇者のする事じゃないんじゃないの…。」
「何言ってんだよとらうま。
優良な一般ピープルからちょっと拝借したまでさ。勇者の特権つーの?」
「うーん…。」
「だってオレたち他人のタンスから物パクっても何も言われないじゃん。
いいよなー。勇者って。最高。」
「……。」
ものすごく間違っている。そう確信したとらうまでした。
「あ、そういえば。」
「何? まだ盗りたらないの?」
「そうじゃねえよ!
…いやさ、ウチの城の中にも金のカギでしか行けない所があったなー…って。」
「じゃあ早速行ってみましょうよ!」
…
一行はローレシアへ。
扉で閉ざされた部屋で金のカギを使い、中に入る。
と、中は宝物庫だった。
その警備に当たっている兵士が一人。
「う、うそつき王子!ご無事で何よりです…!」
「うーんと…、あのさあ。」
「はい。」
「なんで中から開けてくれなかったの?」
「あ、いや、その…、ちょ、ちょっと、剣で突っつくのやめてくださいよ、いたっ、痛いっ。」
「ねえ?ねえ?ねえ?」
「あ、あのっ、いたっ、ですから、んと…。」
そこへ。
「わしじゃよ。」
「! ち、父上…!」
「お前にはまだ早過ぎると思ってな…。
その兵士に扉を開けないよう命じておいたんじゃよ。
…そこの宝箱を、あけて見なさい。」
中には。
「これは…。」
紛れもなく「ロトのしるし」。
「お前に本当に勇者になる素質があるかどうか試したくてな…。
本当に勇者になるべきものなら、
金のカギを探し出す事などたやすい、と思ったんじゃよ。
仲間ともうまくやれているようじゃし…。
よかろう、そのしるしを持っていくが良い。」
「父上…。」
とりあえず。
ギラとか唱えてみました。
「な、何をするんじゃあ貴様ら!!!! わしの、わしのガウンがああああああ!!!!!!」
「うっせー偏屈ジジイ!!! さっさとよこしゃーいいんだよ!!! バカ!!! 死ね!!! 逝ね!!!」
「キ、キッサマアアアアアアア!!!!!
捕えろ!あいつらはハーゴンの手下じゃ!!! 2回は死なす!!!!」
そう叫ぶと、ワラワラと兵士が集まってきた。
「…血は争えないわね……。」
「なっ、何がッ!!?」
とにかく逃げる勇者たち。
「チッキショウ覚えてやがれええー!!!」
「やがれええー…」
「れえー…」
…
「…私たち、本当に勇者なのかしら…。」
「…」
「そ、そうだ、ボクのお城にもあったよ、金の扉。行ってみようよ!」
「うん…。」
その足で一行はサマルトリアの城へ。
金の扉で閉ざされたその部屋に、老人が一人。
「…お待ちしておりましたとらうま王子。
これがかの有名な勇者ロトが装備していたとされる、ロトの盾ですじゃ。
さあ、受け取ってくだされ…。」
「ああ、ありがとう…。」
…
その日の宿屋にて。
「いいなあ、とらうまは…。」
「なんで?」
「オレさあ、今までずーっと勝手にしててさ、
その・・・勇者らしいふるまいとか、そういうの、わかんないんだよね…。」
「…いいんじゃない?」
「え?」
「ぼくはうそつきのそういうとこ、うらやましいけどなあ。」
「そ、そうか?」
「うん。ボクなんて言いたい事もきちんと言えないし、閉じこもりがちだし…。
「そう…か。」
「そうだよ。…あ、そうだ、うそつき、このロトの盾、うそつきが使ってよ。」
「え? なんで…。」
「ボクじゃあとても使いこなせないよ。…それに、うそつきなら似合うよ。その盾。」
「そう? …じゃあ遠慮なく使わせてもらうよ。 …その、あ、ありがとうな。」
「ううん。」
…次の日。
一行は「聖なるほこら」へ。
「この兜はな、勇者ロトの血を引きし物にしか渡せないんじゃよ…。」
そういわれるなり、すぐさまロトのしるしを見せる。
「オレたち、勇者です!」
元気良く、そう答えた。
勇者として。
勇者らしい事ってなんなのかわからないけど、自分の進む道が正しいんだと思う。
それが勇者なんだと思う。
そう信じて。
「…この次はどこ行きましょうか…。」
「あ、地図でいくと…、こっちの方、行ってないわね。」
「よし、行こう!」
一行は水の町ベラヌールへ。
「うみうしなんざすべてブッた切ってくれるわああー!!!」
変わらない勇者たちは今日も行く。