「後ろからひと突き……か」
現場はきれいなものだった。路地裏。横たわる死体。女性。20代後半。
道の先には女性の住むマンション。おそらく帰り道。
ほんの一瞬の出来事だったことが窺える。
「グングニル」
そうベテランの刑事がつぶやいた。
若手の警官が不思議そうに尋ねる。
「グングニルって……なんですか?ファンタジーの?」
「ああ……オレはあんまそっち方面は疎いんでな。そう……槍だ、槍」
「そのグングニルがどうか……したんですか?」
「ホシ(犯人)の名前だ。おい、ここを見てみろ」
女性の死体をばつが悪そうに指差す。
「こ、これは……!」
--20XX年。ネオカナガワの一角。
下層のとあるビル。8階。男女の話す声。
「お見事……ね。さすがグングニル」
「やめろよ」
「そんな事言って……意外と気に入ってるくせに。その名前」
「……」
くたびれた革張りのソファに腰掛ける、中性的な顔立ちの男。
髪はショートだが前髪はだいぶ伸びており、目はほぼ隠れている。
彼こそが、グングニル。
当然だがグングニルというのは偽名だ。彼の本名ではない。
普段はニルと呼ばれている。
仕事は清掃屋(スイーパー)。
清掃と言っても、対象は専ら”人間”だ。
「報酬はいつもどおりポストに……」
言うやいなや、ガサッという音が玄関から聞こえて来る。
「……入ったみたいね」
おもむろに玄関に出歩き、報酬を拾い上げる。
彼女の名はイヴァルディ。もちろん、偽名。
胸ばかり大きいのがコンプレックスらしい。
ニルのマネジメントをしている。
「……あら。また依頼が入ってたわ。忙しいわね……ニルも」
「今度のターゲットは?」
「本当、仕事熱心よね……。カーロン=ルーゴス。サニーコープ社長。
表向きは、やり手の経営者。
でも実態は……人を人とも思わないブラック社長てとこね」
イヴァルディがターゲットの写真を見せる。
なかなかの美女。眉が太く大きな鼻が特徴的だ。
「彼女は今裁判で係争中……。まあ……小物だわ」
「小物でも全力で仕留めるさ。この”槍”で」
翌日。深夜。
ルーゴスの自宅。
「ジャップのアホども……やっちゃえ裁判みたいな空気だしやがって……
どうせ金が欲しいだけだろ!この金1円もやらんぞ!っざけやがって!」
ひたすらにワインをあおるルーゴス。
「おい!そこの警備!」
「はっ」
「お前、私の相手をしろ」
「そっ……それはどういう……」
警備に壁ドンをキメるルーゴス。
ブラウスの奥に下着がチラつく。
「そんな事、私に言わせる気か……?」
「いやっあのっ……ち、近いですルーゴスさま」
ルーゴスのワインにまみれた吐息が警備の男を包み込んでいく。
吐息は少しずつ、少しずつ、ゆっくりと、警備の意識を奪っていく。
あたたかい、甘美なる吐息。
目がうつろになっていく。
すっかり蕩け切った……その瞬間。
「ふっ……あっはははははは!」
突然笑い出すルーゴス。
「お前みたいなモブ風情が……あっはははは! おい吐息分の金払えよ! なあ!」
警備は感情がぐちゃぐちゃになってしまい、その場に座り込んでしまった。
ルーゴスがヒールで一発、蹴りを入れる。
「ったくモブに人権なんかねえってのに」
小さく毒づくルーゴス。そのままワインを片手にベランダに出る。
大きな月。眼下に夜景。天を仰ぐ。
ワインを撒き、声を上げた。
「裁判がどうした!私は逃げきってみせるぞ!!!
どうしても止めたきゃ殺してみろーーーーーッッ!!!!!」
その時だった。
ヒュッという音とともに、ルーゴスは天高く打ち上げられた。
「なっ--!!?」
体は宙を舞い、屋上に叩きつけられる。
「ぐぁっ」
月明かり。ワインまみれのスーツ。
酒の所為か、打ち付けた影響か。頭が割れるように痛い。
わけもわからず起き上がると、
そこには月の光を浴びた1人の男がいた。
「だっ……誰だ!」
男は静かに言った。
「……グングニル」
逆光から浮かび上がるシルエット。
そこには、男から、あきらかに、
巨大なグングニルがそびえ立っていた。
風を受け、木々が凪いでいる。
そんな中でも、微動だにしないグングニルが、そこにあった。
「おあっ……お、お前!そのなんだ……それが、グングニルか!?」
「そう……グングニル。貴様をグンとやって、グニる」
「グンってやって、グニる……!? う、う、……うわああぁぁああーっ!!!!」
聞いたことがある。清掃屋?殺し屋?だがもう、なんでもいい。
とにかく今、そいつが目の前にいる。
裁判どころではない。今ここで、殺される。
恐怖のあまり逃げ出そうとしたその瞬間、
すでに背後にはニルの姿があった。
「いっ……!? いつの間に!!?」
「私が近づいたのではない。貴様が近づいたのだ」
どうやらニルの先から出ている粘度の高い液体で
ルーゴスは引き寄せられたらしい。
あまりに瞬時の出来事であったため、
ルーゴスは自分の背後に回られたと錯覚したのだ。
「さあ……遊びは終わりだ。」
「ぐっっ」
「貴様には……逝ってもらう」
ルーゴスの体をガッチリとホールドするやいなや、
一気に下から、”槍”を突き立てた。
ドシュッッ
「!!!! はぅっっ…… がっ…… か は……っ……」
あっけないほどの一撃。
数秒の痙攣を経て、白目をむきドサリと倒れ込むルーゴス。
抵抗することもできない。即死だった。
「社長!」
警備が屋上に来たときには、すでに社長は事切れていた。
ニルもまた、姿を消していた。
あたりには、芳醇なワインの香りが漂っていた……。
翌朝。事務所。
ニルはプロテインを飲んでいた。
「昨日はどうだった?」イヴァルディが様子をうかがう。
「いつもどおりだ」
「そう……さすがね、ニルは」
「依頼は?」
「今日は……ないかな」
そういうとイヴァルディはまた眠りについた。
束の間の休息。
珍しく穏やかな顔を見せるニルだった……。
おひさしぶりです。ジャジャです。
いきなりの下ネタ発進です。どうですか。どうですかこのやろう。
えっと、TYPは下ネタをやらないポリシーで20年間運営してきました。
であのー、逆に、
ウチでやる下ネタってどういうのだろう?というのをですね、思いまして、
もう今年は2020スーパーベースボール(SNK)イヤーですので(笑)、
書いてみてもいいんじゃん。って事で。そのまんま書いてみました。
これ、12話まであります(笑)。
もうほとんど出来上がってます。
今日から毎日アップしていきたいと思いますので、よしなに…。
ちなみに当初はもっと描写が露骨で、サイトに上げるつもりありませんでした。
でもねー、こういうのってもう、欲求そのままだから、
書いてて楽しくなっちゃうんですよね(笑)!
そうなるともう、サイトに載せないともったいないってんで。ねえ。
うーん、久々に、完全なる「自分のための創作」だなって思います。
需要がオレで供給がオレ。さいこう。
もうさあ、そうやって生きていこうよ。オレ気が付いたら中間管理職だよ。
おちんちんくらい好きに動かさせてくれよ。もう。
あ、今年もよろしくお願いします。
ギリギリセーフ!steamで旧正月セールやってるくらいだし!
よかったら拍手ください。くれなくても勝手にやります。
2019年は、自分の中では種まきの年でしたね。
そしたら、まー根腐れしましてね(笑)。
小学館さんとか。行きましたね。いい思い出です(笑)。