Brother7

むかしむかしあるところに
7匹の子ヤギとお母さんヤギが住んでいました。

ある日、お母さんヤギが言いました。

最近この周りをオオカミがうろついているから気をつけなさい。
お母さん以外の誰かが来ても、いついかなる時でも、
絶対にドアを開けてはいけませんよ。
それじゃお母さん、買い物に行ってくるから。

こうしてお母さんヤギは出かけていきました。
7匹はなかよくお留守番です。


お母さんヤギが出かけて間もなく、ドアをノックする音が聞こえました。

お母さんだけど、開けてくれる?

明らかにお母さんヤギの声ではありません。

子ヤギたちは息をひそめて静かに待ちました。
しばらくするとドアの向こうから舌打ちと、遠ざかる足音が聞こえました。
どうやら無事やり過ごせたようです。

しばらくすると、またノック音が聞こえました。

お母さんだけど、開けてくれる?

今度はお母さんヤギの声がします。
うれしくなって7匹目の子ヤギが開けようとしましたが、
2匹目の子ヤギがそれを止め、鍵穴から外をのぞくことにしました。

なんと、お母さんのものとはとても思えない、黒い手が見えます。

子ヤギたちはまた息をひそめました。
バンッ、という扉を蹴った音と、遠ざかる足音が聞こえました。
今度も無事、やり過ごせたようです。
ほどなくして、また声が聞こえました。

…お母さんだけど、開けてくれる?

明らかにオオカミの声です。
子ヤギたちが息をひそめて静かにしていると、オオカミはこう続けました。

いるのはわかってんだよ…うまそうな子ヤギがな。
お母さんは留守だろう?しかも出かけたばかりだ…。
6匹…いや、7匹だな。7匹。
いいか?お前らにチャンスをやる…。
今から5分間だけ待ってやる。その間におとなしく出てこい。
出てくれば命だけは助けてやる…。

さあ大変です。きっとオオカミはどんな手を使ってでも入ってくることでしょう。
なんとかしてやり過ごさなければなりません。

1匹目はベッドの下、
2匹目はドレッサーの下、
3匹目はテーブルの下、
4匹目は暖炉の中、
5匹目はイスの下、
7匹目は、柱時計の中に隠れました。

6匹目はパニックになり、窓から逃げ出してしまいました。

…5分と経たず、オオカミは窓から入ってきました。
口から6匹目の子ヤギがつけていたスカーフを吐き出すと、
次々と5匹の子ヤギを見つけて、飲み込んでいきます。
しかし柱時計に隠れた7匹目の子ヤギはとうとう見つからず、
名残惜しそうにオオカミは去っていきました。

しばらくして、お母さんヤギが帰ってきました。
お母さんは荒れ果てた家を見て、泣き崩れてしまいました。
そこへ…7匹目の子ヤギが柱時計から飛び出してきました。

まあ!ほかのみんなは?いったい何が起きたの?

7匹目の子ヤギは事のてんまつを話しました。
お母さんヤギは見たこともない憎悪の顔を浮かべ、
オオカミの足跡をたどりながら走りました。

夢中で足跡を追いかけていると、ついに河原で寝ているオオカミを見つけました。
お母さんヤギは、もっていたハサミでオオカミのおなかを斬りました。
痛みで起き上がるオオカミを大きな石で殴り、気絶させ、
一心不乱にオオカミの腹をジョキジョキと斬るお母さんヤギ。

すると…中から丸のみにされた子ヤギ達がどんどん出てきました。
7匹全員、みんな元通りです。
安堵の顔を浮かべたお母さんヤギは、ポツリと言いました。

石を…こいつの腹に入れるのよ。

子ヤギたちが集めた石は、オオカミのお腹にどんどん詰められていきます。
どんどん、どんどん…
最後にお腹をおかあさんが縫い合わせたとき、
オオカミは目覚めました。

き、きさまらはさっきオレが丸のみした子ヤギどもじゃないか…
お前ら、オレに何をしたんだ?

お母さんヤギは言いました。

我が子を食らう悪魔め…!子どもたちは返してもらいましたよ。
あなたは一生石を腹に詰めたまま、苦しんで生きるのです。

するとオオカミは、ふらふらと立ち上がりながら、
大きく笑って答えました。

悪魔…?どっちが悪魔だろうな?
確かにオレはお前らを食った。まぎれもない悪魔だ…。
だがな、本当の悪魔はそこにいるお前らの母親だ!
いいか、お前ら子ヤギは本当の――

そこまで言いかけた瞬間、
お母さんヤギがオオカミの顔にハサミを突き立てました。
オオカミはどす黒い血を流すやいなや、
大きな霧とともに消えてしまいました。

お母さんヤギは、天を仰いで大きく笑い、
みんなで仲良く家路についたのでした。


…そして、ある晩。

1匹目の子ヤギが、夜中に起きて、こうつぶやきました。

もう、こんなことはやめよう。

それを皮切りに、2匹目、3匹目、4匹目、5匹目、6匹目と目を覚ましました。
7匹目の子ヤギは1匹目に起こされ、6匹で外に出ました。

外に出ちゃいけないんじゃないの?

7匹目の子ヤギはそう問いかけますが、6匹は無視して歩いていきます。
少しして、ひとつのお墓にたどり着きました。

これは?

7匹目の子ヤギが聞くと、6匹目の子ヤギが言いました。

これは…ぼくの弟のお墓だよ。7匹目の。お墓。

意味が分からず考え込む7匹目の子ヤギ。
自分が7匹目ではなかったのか?
本当は8匹いたのか?それとも、これは自分の墓なのか?

1匹目の子ヤギが、口をひらきました。

ついてきて。

7匹はまた歩き始めました。
歩いて、歩いて、歩いて…
子ヤギたちは、小さな洞窟を見つけました。
ためらわず、奥へと入っていきます。

狭くて暗い、洞窟の道。
その奥の、少し開けた場所に…

ガタガタの線で書かれた魔法陣がありました。
魔法陣はぼんやりと赤い光を放ち、
まるで子ヤギたちを迎えるかのようでした。

なぜこんなところに魔法陣があるのだろうか?

7匹目の子ヤギが、その魔法陣について尋ねようとしたその時。
1匹目の子ヤギが、声をあげました。

ねえ、その魔法陣…何だと思う?

他の皆は下を向いたままです。

黙ってられないから…言うね。
この魔法陣は、お母さんが作ったんだ。
なぜこんなものを作ったかって?
それは…

7匹目の子ヤギの眼を見て、1匹目の子ヤギが続けます。

君をヤギの姿に変えるためなんだよ。
君は、本当はヤギじゃなくて、人間なんだ。
僕たちを飼っていた…飼い主なんだよ。

僕たちは7匹の兄弟だった。
でも、ある日7匹目が病気になって、死んでしまったんだ…。
お母さん、ものすごいショックを受けて…
どうにかして、元の生活を送りたいと考えてさ。

思いは日に日に強くなり、
それは飼い主であるあなたへの逆恨みになっていった。
そしてそんな憎悪の念から、悪魔との契約を思いついてしまったんだ。

悪魔に促されてお母さんは魔法陣を書き、
あなたは記憶を失い、ヤギにされてしまった。
…お母さんはとても喜んだよ。死んだ兄弟が生き返ったわけでもないのにね。

けど、それで終わりじゃなかった。
悪魔は…僕たち全員を食べようとしたんだ。
僕たちを執拗に狙っていたオオカミ、あいつこそが悪魔さ。

きっとお母さんは、わかってたと思うんだ。狙われるってこと。
でも、僕たち全員が食べられるリスクを背負ってでも
7匹のころに戻りたいと願うようになってしまったんだ…。

だからお母さんは、ぼくたちを守る一心で家から出さなかったんだ。
もうわかってると思うけど、あの家は、あなたの家なんだよ。

今までだまっててごめん。怖かったんだ。
悪魔もそうだけど、なによりおかしくなったお母さんが…。

でもそれもおしまい。
悪魔も死んだ今、この魔法陣を消せば、あなたは人間の姿に戻れるはずさ。
そうすればあなたとぼく達は、また飼い主と家畜の関係になれる。
それはお互いのためさ。さあ、…消してくれ。

苦悩する7匹目の子ヤギ。

でも…みんなと暮らした時間を……

それを6匹目の子ヤギが叱責します。

いいんだ!ぼくの弟は死んだ!誰のせいでもない!
あなたは人間だ!私たちといた時間は楽しかったかもしれない!けど!
人間には人間の幸せがある!あなたを失って悲しんでる人もいるんだ!
だから、早く…

その先を言い終わる前に、洞窟にお母さんヤギがあらわれました。
恐怖で硬直する子ヤギ達。
お母さんヤギはの1匹目の子ヤギの肩をつかみ、やさしく話しかけました。

すべて…話してしまったのかい?

1匹目の子ヤギは、しずかにうなずきました。
その瞬間、お母さんヤギは持っていたハサミで
彼のおなかを引き裂いてしまいました。

あれほどしゃべるなと言っておいたのに…
7匹揃わなきゃ意味がねえんだよ!!!

吐き捨てるように言うと、
私は何もしてないと必死に訴える2匹目の子ヤギの首をもぎり、
1匹目のお腹に詰めました。
笑い転げるお母さんヤギ。

その隙をぬって、残りの子ヤギが外に逃げ出しました。
しかし、お母さんヤギはゆっくりと起き上がると、

出口ならつぶしておいたぞ!!!
あとでゆっくり話をしようじゃあないか!!!!

そう叫ぶなり、魔法陣の横で立ち尽くす
7匹目の子ヤギに目を向け、こうつぶやきました。

せっかく、7匹に戻れたのにねえ…

物悲しそうなその手には、力強くハサミが握られていました。

おしまい。


2年くらい前、身内でやろうとしたTRPG(つかサウンドノベル)のシナリオを

加筆修正して一本のショートストーリーにしてみました。

いつも思いますが、笑いと恐怖は紙一重…ですね。

プレイヤーは子ヤギです。プレイヤーの数だけ人間に戻るという。

実際は分岐があって、出ちゃいけないのに出ちゃうエンドとか、

最後ハッピーエンドとか、いろいろ。ちょこっとテキスト残ってます。

…それにしても、ものすごい放置ぶりで申し訳ないです…。人生はままならない。

今はいわゆる、「一生どうでしょうします」みたいなカンジでして、

ずっと創作活動するために少し充電してるような。状況です。

日々もんのすげー働いております。創作脳はフロシキに全部振ってます。

twitterはほとんど帰りの電車で見てるだけ。

同人活動はもうこうなる状況がある程度見えていたので今年度は凍結。

土日は簡単なプログラムに手を出したり、仕事したり、なんだり。

ゲームは全然やれてません。積みっぱなし。普段はツムツムと…デレステを少し。

正月やりこみたい!つか正月までできねー!デッドラ4出ちゃったよ!

もう、サイトやれないならTYPでtwitterアカウント作って

ネタはそっちに吐き出す方がいいかなーとか。ねえ。あはは。

死神飯店と商業でやってる「まる生」は、我ながらよく続いてると思います。

ちゃんとネタ書いてますよ。書いてますとも!

今日は少し時間が出来たのでガッツリとサイトにフィードバックしました。

さあ、またがんばろう。