たわごと

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セイソウのグングニル #12(END)

「イヴァルディ!」ニルが駆け寄る。  「ニル……ごめん…… 私……邪魔になっ……ちゃって…………」  いつもの気丈さはなく、か細い声で話すイヴァルディ。とっさに手を握る。冷たい。「わか……るんだ…… もう…………」いつも着ているスーツ。血が...
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セイソウのグングニル #11

--ない。イヴァルディの姿が。  いつも通りの仕事。いつも通りの結果。いつも通りの日常。事務所に戻ってくるまでは。違うのは、イヴァルディがそこにいないこと。何かの冗談だと思った。テーブルの書き置きを見る。戦慄が走る。  「トネリコまで来い」...
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セイソウのグングニル #10

ここネオカナガワの主流な肉料理はチキンだ。安く、環境にも強い。エサも水と廃棄食料で良い。まるでカプセルホテルのようなケージにひよこの状態で放り込まれる。中には前時代の穏やかな牧場風景が投影され、動くと足元のランナーが動作し、風景と連動する。...
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セイソウのグングニル #09

レトロムーン。あらゆる生物を受け入れるBAR。内装は濃い目のピンク。少し古いスナックの面影。酒はまずいが料理には一定の評価がある。しかし……「……客、こないわね」30代中頃、肩出しのドレス、クレーターを模したヘアブローチ。背はそこそこ高く、...
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セイソウのグングニル #08

(つづき)実験の最終試験を終えたサイナス=ヤーナとシーラ=ヤマザキ。サイナスは自分の姿に、それほど衝撃を受けなかった。元々どうなってもよい覚悟で臨んでいたため、あっさりと、全てを受け入れることにした。シーラに自ら声をかける。「またがんばろう...
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セイソウのグングニル #07

かつてのニホンは分断された。まるで、昔のロール・プレイング・ゲームのようだ。郊外は死の大地となった。電気も水道もガスも途絶し、住む者はほとんどいなくなった。街をつなぐのは、衛星とケーブルのみ。ネオトーキョーは東京湾の埋め立て地に作られた。今...
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セイソウのグングニル #06

今回のターゲットは年齢不詳。サロン・ファンガールのオーナー、シャンカーン=ナカタ。依頼内容によると、店の女の子を使って富裕層にハニートラップを仕掛け大儲けしているらしい。ネオカナガワでは、売春は法律で禁じられている。しかし、この街において法...
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セイソウのグングニル #05

THE FUDGE(ファッヂ)。一卵性の双子。彼女らのユニット名。仕事はモデル兼ミュージシャン。長身で大柄な体型。丸みを帯びたふくよかな体。奇抜なメイク。奇抜なパフォーマンス。ひと昔前ではとてもモデルに向かない体型だが個性が重視されるこの世...
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セイソウのグングニル #04

日常。毎日のように届く依頼書。そして報酬。依頼をさばくのは、イヴァルディの日課。イヴァルディは、空中庭園グラズハイムの政府建屋に席があり、本来の住まいもその周辺にある。しかし今は、理由あって清掃屋(スイーパー)ニルとともにこの下層ビルの一室...
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セイソウのグングニル #03

「最近依頼が増えたわね……」イヴァルディがこぼす。「お金貯まるのはいいけど……たまには買い物でも行きたいな」「そうだな……」「ねえ、ニルはそういうの……ないの?」「何がだ」「例えばその……さ。好きな人と出掛けたり」少し間があく。「無くは……...